総務省が行なう「地域おこし協力隊」という制度があります。地域おこし協力隊は2年間の任期であり、行政、隊員、双方の合意があれば1年間の任期追加が可能となり、最長3年間隊員として活動することができます。
我が国ではこの地域おこし協力隊制度を実施する自治体数は886に及び、述べ総隊員数は3,978人になりますが、現在の総隊員数は4,000人を超えていると思います。平成21年度から開始されたこの制度は、隊員が地域に定着し、そろそろ結果が見えてくる時期だと思います。
移住希望者の職業選択の1つになりつつある地域おこし協力隊ですが、ときどき制度の善し悪しを耳にします。今回は地域おこし協力隊と移住について記載したいと思います。
良い点悪い点
まず地域おこし協力隊の利点は、総務省も述べている通り、行政ではできなかった柔軟な地域おこし策や住民が増えることによる地域の活性化が上げられます。また、地域の方々は「よそ者」「若者」の斬新な視点による地域資源の発掘や隊員の熱意や行動力を見て、大きな刺激になると思います。地域おこし協力隊隊員としては、理想とする暮らしや自身の才能や能力を活かした活動を行なうことができます。これだけ聞くと「三方よし」の導入効果と思いますが、現実はそんなに甘くありません。
悪い点は最長任期が3年であり、概ね報酬が200万円〜300万円であること。つまり月収は約16万円であり、住居は市が用意してくれるとしても、都市部から見ると低い賃金と感じるでしょう。因に私の大卒時の初任給は248,000円でした。
また隊員はその地域の課題にあわせて課題解決のために活動しなければなりません。自分の得意分野と地域の課題が一致する場合は問題ありませんが、必ずしもそうでなく、ソーシャルビジネス経験の少ない若者が少ない予算と期限付きの任期で地域の心を動かし、協賛を得て、自分の親以上に年配の方を説得させ事業を実行させることは想像以上に過酷でしょう。外部コンサルを入れると何千万円もかかる仕事を1人で行なうのであり、本当はとても大変です。
どうすればよいか?
そこで私は「起業のための地域おこし協力隊」や「移住(定住)のための地域おこし協力隊」をオススメします。例えば起業のための地域おこし協力隊は、活動地域で起業する人や、林業、農業などの一次産業を希望する方はオススメです。これらの方は仕事をするにあたり、地元の方と関わる機会や良い関係性を作る上で地域おこし協力隊制度は適していると思います。行政と共に仕事をすることにより、地域の課題や特色がよく見えてくると思います。
3年間でこの地域で事業を成功させるには何が一番の近い道なのか把握出来ると思います。また、移住(定住)のための地域おこし協力隊も良いと思います。ただ田舎暮らしや大自然の中で暮らしたいだけであれば、不動産屋経由で家を購入すれば良いのですが、手に職を持つ方や前職の経験を活かし地元企業で就職希望の方は地域おこし協力隊制度を利用することにより、地元の方と深い交流を持ち、地域で働くことになったとしても、活動地域での経験を活かし地域の担い手になるのではないでしょうか。
また、社会人経験を持つ人は、様々な方と接してきたため、難しい課題が起きても抵抗は少ないと思います。WEBで地域おこし協力隊のブログを良く見ますが、組織の一員となると理不尽な思いをすることは山ほどあります。基本的に誰もサポートしてくれず、誰も力になってくれない覚悟で隊員として活動した方が楽かもしれません。
私が青年海外協力隊でフィリピンのレイテ島に派遣された時は、町に日本人1人(私だけ)、予算0円、言葉は通じず、職員のやる気はなく、異文化の地(トイレは毎回手で洗う)で、しかも2年間の任期で結果を出すように政府から要請を受けました。
今考えると相当無茶振りなんじゃないの?・・・と思います。
様々な分析を行い結果を残し帰国しましたが、ここまで理不尽な要請(活動)は・・・無いと思います。地域おこし協力隊をチャンスと思い、参加される志を持つ方が増えることを望みます。
